v i s i o n    vol,1-2

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闘技場は広く、石盤が円を描いてきれいに並べられている。そこに立つと2人はお互いに槍

、剣を構えて見合った。 



その様子を観ながら燃燈が玉鼎に言う。 

「まずは小手調べと言ったとこか・・・。まぁ勝負云々というより太乙の力量を私としても知ってお

きたい、今後の推薦 状況にも影響するだろうからな。」 

それを聞き受けながら玉鼎が 

「その事ですが…燃燈師兄。私はまだ仙人に昇格してもいない道士です。その私を十二仙に

押すというのは俄に信 じられませんが…?」 

と言ってきた。燃燈はやれやれと言った感じで玉鼎に言う。 

「・・・まだ渋るか。向こうは十天君なる幹部を立てる計画を進めているのだ。こちらとてそれに

対抗しないわけにはい かぬ、この崑崙にお前ほどの道士はそうおらぬ。それにお前ならば仙

人昇格は時間の問題だろう、・・・十二仙、これはお前の宿命としろ。」 

淡々と言い放つように言われ玉鼎は押し黙ったまま闘技場へ目を移した。 



 既に2人は構えを解いて間合いをジリジリとせめぎ合っていた。 

闘技場に緊張感が張り詰める。道徳と太乙の実力の差は明らかだった。道徳はトンッと地面

を蹴ると太乙の槍の間合いを瞬時に崩した、その衝撃で太乙は後へと体勢を崩す。 

「勝負あったな。」 

燃燈が呟き、驥尾を返す、その時。 

 道徳が振りあげた剣先が太乙の頭へ振り下ろされる、 



「うっ・・・!ぐっ・・・」 

呻き声を上げたのは道徳だった。 

「何?」 

 燃燈は弟子の呻き声を聞いて振り返えり目を見張った、目の前の闘技場では道徳が槍の先

をみぞおちに食らって 咽込んでいた。 

「げッ!うっえぇ…!」 



太乙はその様子を見つめたまま呆然とした顔をして肩で息をながらまだ座り込んでいた。 

燃燈は道徳に駆け寄った。 

「油断したな。」 

そう言いながら道徳の背中に手のひらを当てると『喝っ!』という一喝と共に道徳へ仙気を送っ
た。痛みが取れて回復した道徳は途端に、 

「・・・すいません。」 

と項垂れた。 

「まぁ。太乙の槍の能力は予測不可能だろうな。」 

玉鼎はそう言いながら太乙の方へ歩み寄るとしゃがみ込んでいる太乙を引き起こした。そこ
へ 

燃燈が、やや驚きを持って玉鼎に聞いてきた。 

「・・・玉鼎、もしや太乙はその幼さで宝貝が使えるのか?」 



「いや、まだ宝貝を扱うまで仙気を練ることは出来ないのだが、太乙は手先が器用なのだ。こ 

の伸縮自在の槍も太乙が自ら造ったカラクリのようなものらしい…。しかし、これを宝貝に応用

することなど太乙ならば簡単にやってしまうだろう。」 

「なるほど、そういうことか・・・。」 

燃燈は頷くと太乙の方へ話しかけた。 

「太乙。お前は良い才を持っているようだな。だが道徳から学ぶ事もまた多かろう。道徳と共に

功夫に励め!」 

2人から褒められて少し得意げに太乙は 

「ハイ!」 

と軽やかに返事をした。 



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