3.みどり食堂

水のシャワーを浴びたりしてのぼせをさまし、車に温泉グッズをおくと、お上さんが温泉博士の雑誌を持って来て、
「ありがとうございました」
と渡してくれた。その時におなかがすいていたので
「今食べれますか?てんぷらうどんとか団子汁とか書いてありましたが。」
と聞くと、
「ええできますよ。団子汁をみなさん珍しがってたのまれますねぇ」
と言われるので生粋の素直君のぼくは、
「では団子汁を頂きます」
と、注文をしつつ建物に入っていこうとして、入り口のところに書いてある看板を見ると
「みどり食堂」
と書いてあった。しらんかった。いや、絶対にこんな名前の食堂があるとはしらなかった。ちなみに、温泉博士に押されたはんこをみたところ「宮崎美登里」という名前入りのはんこが押されていた。よっぽどなにかを女将さんに言いたかったけれど、当然何も言うことなくインコを観察していた。目を建物内に転ずると、およそ食堂とは明確に言い切れるような場所ではない気がするけど、ある意味いい感じの空間が出来上がっていた。昔の家の広い土間のところにテーブルが一つ、いすはテーブル用が6つくらい、脇にまた3つくらいあった。天井からはポケットモンスターのキャラクターの絵が入った、風船でできた飛行機がぶら下がり、来た人の精神を否応なく混乱させる。壁にあるメニューを見ると、ラーメン、てんぷらうどん、比婆牛ステーキ1575円(税込み)団子汁定食1050円などがあった。
と、しばらくすると
「こんにちは、おられんかね」
とここの近所のおばあさんらしき人が入ってこられたので、
「いまたぶん僕の団子汁を作っておられると思いますが」と言うと、それからさらに呼びかけることはなく、いすに座りテレビを見始められた。
「兄さんどこから?」
「島根です。島根の木次町と言うところから来ました。」
「へえ、島根の木次(きつぎ)からぁ、島根には温泉がいっぱいあるんじゃねえか?」
「(大半のところには行ってしまったとは言えず)ええ、でもたまには遠くの行ったことのないところにも行ってみたくなって来たんです」
「そうか、そうか、たまに遠くに行くと、ぺちゃくちゃ良くしゃべるおばあさんにあったりもしますわな」
と御自分の方を指差しながら本当に楽しそうに笑われるのであった。その後糖尿病患者用の飴玉をいただきなめていると、テレビでみんなの体操が始まった。そうすると当然のようにテレビに合わせて体操をし始められ、
「ほら、お兄さんもいっしょにやらんかねぇ」
とさそわれたけど、テレビにあわせて体操をする人を見るのが初めてだったため、しばらく放心した後、テレビとは違う動きをしながらも体操をした。ってなことをしていると団子汁をもって女将さん登場。

団子汁の感想
めちゃくちゃうまい。おなかが減っていたせいかもしれないけれど、それを差っぴいてもかなりいけるはず。汁の味は味噌汁仕立て(温泉博士より、って自分じゃわからんのか)。味付け油揚げや麩や、あまり目にしないキノコが入っていた。食べつつ、「このキノコは何ですか?コウタケですか」と尋ねると、
「よぉしっとぉねえ。田舎の人とかじゃないとわからないよねえ。最近の都会の人だったらわからんよねえ」
「でしょうねえ。みたこともないでしょうね、スーパーにも売ってませんしね。ぼくは生粋の田舎者なのでわかったのでしょう」
団子がもろに笹巻きの団子の味だったので、笹巻きの話をし(笹が防腐剤になるらしい)、本題の温泉について聞いてみる。
お客さんは毎日15人くらい来ているそう。
源泉のお湯のみを使っていて、お湯は温めるだけで、こしたり塩素を加えてりしていないそう。そういえば温泉施設にはあってはいいけない垢とりネットが柱に引っ掛けてあった。
「人が多いと消毒とかしないといけないだろうけど、少人数だからちょうどいいですね」
「そうなのよ(笑)。風呂を作ったときには、お湯をきれいにする装置を取り付けませんか、という話もあったけど、温泉をこしたりすると温泉のよさがなくなるから」
と言って笑っておられた。温泉に対するこだわりがうかがえて、こちらとしてもうれしくなってくる。温め方は、焚き始めはガスだか灯油だかと木の併用、後は木だけをいれていくみたい。温泉の水を常に入れてもらいたい気がするけれど、水温が低いからそれは無理なんだろうなと思った。源泉掛け流しというのは施設の努力だけでなく、温泉の温度も関係あるのだなあと思った。

このころテレビでは佐世保の小学生が同級生を殺したニュースが流れる。よくわからない世の中になったわねえとおっしゃる。

それから源泉は飲める水で汲みに来る人も多いという話に。汲んで帰ろうとペットボトルを取りに車に行こうとすると、引き止められ、「おいしい水」2リットルの入れ物2本に水を入れて渡してもらえた。コーヒーや水割りに使うとおいしいみたい。あいにく酒もタバコも女とも関係のない自分にはそれほど関係がないみたい。

そんなこんなで大満足し、お金を払い、みどり食堂を後にする。


4.熊野神社


近くにある駐車場で止まり、観光マップを見たところ、近くに熊野神社という大きな杉の木がたくさんある神社があるみたいなので行くことにした。

着いて看板を見ると以下のお話が書いてあった。

「古事記に「故(かれ)、其の神避りし伊邪那美神は出雲国と伯伎国との境、比婆の山に葬りき」とある比婆山(命《みこと》山・美古登山)を伊邪那美神の御陵と仰ぎ奥院という。」

美古登ねえ。偶然とは言えストライクな感じですね。
つまり、○○○さんはもう「過古」の人だと。
って、だいたい、冗談半分(半分かよ)としても、こんだけ「美」とか「登」とかにこだわっていて、新しい女性を紹介してもらっても良いのでしょうか?僕はそれがとても不安になり、おみくじ50円也を購入した。
で、ここの杉の大きさは半端じゃない。ちょっとないくらい感動した。広島の2、3、4位の太さの木がこの境内にあるってんだから驚きでい。

さて、見るのを忘れたおみくじは家に帰ってから見てみた。何と書いてあったかというと、

恋愛 ためらわず告白せよ
縁談 人にたのんで進めよ上々吉

えーと、どうすればいいのだろうか。僕の大好きな竹仲絵里さんが
「♪ちゃんと傷つかなきゃ次の恋をみつけられないと君が言った〜」
と歌っているように、取り敢えず告白してちゃんと振られ(既定路線)、それから新しい恋をしろということでしょうか。僕は全く告白の必要性を認めません。

「縁談は人にたのんで進めよ上々吉」というわけで人におんぶにだっこで頼って行きますのでよろしくお願いします。

まあそういうわけで、図らずも僕の心の中の緑色を払拭する旅行になったということで合点していただけましたでしょうか?

へぇ〜、へぇ〜。

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