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「夜がくると、私は家に戻る。そして、書斎に入り、官服に着換えるのだ。こうして、礼をわきまえた衣服に身をととのえてから、古の人々の集まる、古の宮廷に参上する。彼らは、私を、愛情をこめて優しく迎えてくれる」−マキァヴェッリ(ルネサンス時代の政治哲学者)
「終わったら電話しますんで」
「じゃあ僕は終わっても電話しませんので」
って言って、サティーの、なぜか立体駐車場で別れ、コンタクト屋さんへ走る、車で。と思ったらコンタクト屋さんに空いてる駐車場がなかったので、予約時間に間に合わせるため、実際に自分の足で走ることになった。
店で待ち時間に日経の土曜についてくるヤツ(日経プラス1ね)を読んでいると丁度コンタクト眼科についての話が出ていた。相変わらず恐るべし日経、僕の先を行っている。ちなみにマイマザーは逆に「わたしがする料理を山陰中央新報がまねする」ってのたまっている。恐るべし、マイマザー。っと、新聞を読んでいると、検査の前に新聞を読むなって医師に注意をうける。ぅんなこと知るか!てか、2回目だな、覚えとけ自分。6ヶ月も前のこったから忘れてた。
終わっても電話がないので古本屋でパチスロのマンガを立ち読みする。あまり良い本がなかったため、サティーの駐車場にて読めずにたまっていた新聞を読む。金価格よ、もっと上がれ。
と、あと一日分くらいとなったところでアネ様より電話。サティーでおちあい、一畑の化粧品屋さんへ向かって歩く。
「どうでした?」
「いい人でした」
「へぇ〜、それでどんなこと聞いたんですか?」
「婚期とかです」
「婚期って(笑)結婚願望まるでないんじゃないの?」
「いえね、母親を安心させるためにね」
「あ〜、自分は結婚に興味があって、占い師に聞いちゃうくらいよ!みたいなパフォーマンスなんですかね、で、いつくらいって?」
「28だって」
「へぇ〜、もうすぐじゃん、がんばりぃ〜、って何をがんばらせようっていうのかわかりませんが。他にはなんか言われました?」
「あなたは表面にでてないけど、奥に良いものをもっているって言われました」
「へぇ〜(他に出せる言葉はないのか?オレ)、そうなんだ」
「あれ、わかりませんか?」
「う〜ん、奥に隠れてんなら人にはわからないんじゃない?でも自分ではそういうものがあるって気づいていらっしゃるんですか?」
「わからないです(笑)」
「うおい!」
「わたし口では大きいこといいますけど、メッチャ小心者なんで、そういうの出せないでいるのかもしれませんね」
「う〜ん、そうですかぁ〜。僕がアネ様と居て楽しく、気が合うのは、アネ様がただかわいらしいからだけではなくって、心の奥に隠された良いものがあるから、そしてそれを表にうまく出せなくってもがいていらっしゃるから、なのかもしれませんね。僕もたいがいもがいてますから」
「やだなぁ〜、かわいいだなんて、おおげさに(右の拳を下方から繰り出す)ほめすぎ(拳はまっすぐみぞおちに向かって伸びる)ですよっ(みぞおちにストラアアアアアアイク)」
「っ!!い、良いもんもんじゃんじょん(クレヨンしんちゃんより)」
「でも、ほめてくれてありがと(^。^/)ウフッ」
最後の言葉を遠いところで聞きながら気を失い、山陰本線のガード下で地面に伏せる私。
気がつくと松江駅の下、シャミネの中にいた。
「きいうしなっとぉ〜けん、一畑の中ではお店の人にへんな目で見られましたよ」
「すみませんね。あ、ここシャミネですね」
「そうなんです。高校の時以来っすわ。なつかし〜、同じ匂いがするわ」
「くんくん、この匂いですか」
犬のように鼻をくんくんしながら歩いていると、薬局有り。前を通り過ぎる時、僕が執拗に眺めながら歩くので
「なにか欲しいものがあったら見ていいですよ(ナイフちらり)」
「めっそうもない、さ、さっさと歩きましょ」
って言ってるそばから、今度は花屋さんを発見し、立ち止まる。
「(電柱ごとに小をする犬並みに手に負えんな)バラの花束買ってくれるんですか?」
「いえね、竹仲絵里の新曲のタイトルが「ガ−ベラ」なんで、記念に買っとこうかなって思いまして。これって今が旬の花なんですかね?」
「年中あると思いますよ」
「ふ〜ん。じゃあまだ何回も買うことができますね」
商品名「オレンジ」という、とうがらしとガーベラが束になったもの(実話)をレジに持って行き購入。久しぶりに花を買いテンションが少し上昇。
以降、一行は一向に立ち止まることを一考もせず、どこへ行こう、どこで憩おう、いこいの郷ってどうよ?と言うこともなく、なぜかモスバーガーへの道をひた歩く。
「なんかモスバーガーに向かってるんですが、食べます?」
「いやです」
「僕もやです。どこ行きますかね」
「あっ、あのですね、私帰らなくっちゃいけなくなりそうなんですけど」
「(な、なに〜!?)」