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ある目的のために完璧に作られたものは、別の目的にも有効に使えるbyシニョリーナ

 

「ところで、うちで働かれる時、納品に行くのと事務室内にいるのって、どっちがいいですか?」

「そうねぇ、納品に行くのがいいなぁ〜。社長とか専務とかいらっしゃらないから、気楽でいいから」

「妹といっしょなこと言われますね」

「(ぷはっ)そ、そうなんだ、あはははは」

 

「ところで、フジハラさんって電話出る時ってそっけない感じですよね」

「そっかなぁ」

「うわっ、この人冷たっ!って毎回思ってますよ」

「うわぁ〜、電話への出方からしてダメなんだ。どうしようもないね。どうしたらいいですかね」

「もっとテンションあげていかな」

「はい、もっしぃ〜、みたいな?」

「言うと思った」

「ダメですか。どうしたらいいんですかね。電話に出る時ってなんか緊張しちゃうんですよね、それでかな」

「だれからの電話かわかるじゃないですか、それでもだめなんですか」

「そうなんだよね〜、なぜかなぁ〜」

この時はわからなかったけど、以前にアネ様からの電話だと思って楽しげな感じで電話にでたらお母様だったことがあることをふと思いだす。それプラス、電話という文明機器への恐れですね。と、どういう感情で電話に出るのがベストかわからんのです、誰に対しても。人間関係の距離感がつかめないのでしょうか?あと、基本的に冷たい人間ですし、ってなら弁解しようがないなっ!

 

アイドル着

受付でたこ焼きを頼まれたり、500mlのビールを買われたりして部屋へ。今回僕は考え方が大人になっていて、川本とか竹仲さんとかaikoを不用意に歌うことはしませんでした。

「運命のかけら」(The LOVE)を初めに歌う。♪たばこ吸う子はいやだとか〜、A型しか合わないだとか〜、そんなこと言ってた、僕の心をわしづかみにした〜♪って部分がとっても好きで。

「調子いいですねぇ」

「そうかなぁ、えへへ」

アネ様は安室とか宇多田とか、夏川りみだとかを歌われる。良く歌えるなぁって感心。

Walk」(〃)を歌ったり。♪精神年齢は17で止まってるのに、今年も誕生日は容赦なくやってきた♪ってのが誕生日間近なんだか、直後なんだかよく分からない僕にぴったりだと思って、いれてみたけど、歌っているうちに乗ってきた。

「めっちゃがんばられますね」

「なんかね、感情移入しやすいんでしょうかね」

喉の調子が上がってきたので、竹仲さんの「まなざし」「ありがとう」を歌う。おいおい、不用意に歌うことはしませんでした、っていってんのに歌ってんじゃん、って声が聞こえてきそうですが、2曲楽な歌を歌って、喉の用意を整えてからですから。にしても1番だけなら歌えるけど、2番から最後にかけてがすっごくきつい。歌いきれませんでした。

「き、きついです」

「ですねぇ」

「アネ様とじゃなくて友達と言ったときには楽に歌えたりするんですけどねぇ〜」

「よくわからないけど、聞かせようとして緊張いるんじゃないですか?私は基本的に自分が歌って満足できればそれでいいって感じです。私ごときに緊張しないで下さいね」

「僕もそんなに聞かせようってしているわけでもないですけどねぇ、喉の調子かなぁ〜。こないだは過去最高の竹仲絵里でしたから、下手になっているわけでもないでしょうし」

「もともと下手ですけどね」

「それは言わんといて」

stage by stage」(PANG)を歌う。

この曲は卒業をテーマにしたような曲で、お別れするけど、今度会うときにはもっとお互いに成長してましょうね、みたいな歌なんです。前にちょろっと話しましたが、この曲を聴いて僕は不覚にも泣いてしまいました。

「ヒロイン」(The LOVE)

「冬のとある」参照?

歌い終わってから

「こないだ友達とカラオケに来たときには「これが2番目にいいな」って言われました。で、一番良かったのはどれ?って聞いたら「まだない」って言われました(笑)」

「そうなんですか。私は、なんか、聞きほれました」

「ぐはっ!」(これまたうれしかったです)

「再会」(〃)

♪あなたを忘れるため〜、どれだけ泣いたか〜、知らないくせに〜♪というとこが好き。歌っている途中、横目で一瞬アネ様の方を見ると選曲をするための本をめくる手を止められていたので、これもまたよかったのかなぁって思ってましたら

「あ、もう喉がきついんであと歌っていいですよ」

って言われる。本をめくる手を止められていたのは、単純に選曲をするのをやめられたからでした。ちゃんちゃん。

 

などなど歌って、ラストはDNA。たまには違う曲をラストに歌えっての。

 

カラオケショッピを出てアネ様の家へ向かう。

「よく女性の歌を歌えますね」

「その「よく」っていうのは賞賛の意味のよくですか?それとも…」

「恥も外聞もなく、よくも歌えますね、の「よく」です」

「…、ですか、トホホ。よく「女性に生まれ変わったらなにをしたいですか?」っていう質問が定期購読しているおかま雑誌のアンケートに載っているんですが、僕は川本真琴の歌を歌いまくるって書いていますね」

 

「僕ってなんかお母様から考えなしって思われているようですが、」

「違うとでも言うんですか?」

「えっ、とぉ〜、だめ?」

「どうみても考えなしにしか見えませんが」

(でもね、正常に動いている機械は騒音がすくない(うろ覚え)っていう言葉があったりなかったりするように、考えも正常に働いていたら側から見たら考えていないように見えるかもね、っていうほど正常に働いている自信が最近ない、よってこの言葉は胸の中に留めておこう)

「う〜ん、それは賞賛の言葉だと思えますね」

「考えなしが?」

「うん。何度か言った気がしないでもないですが、思慮深い、聡明である、と周りから思われていたフシがあった若い頃(違ってたらごめん、ていうか違うか)から考えなしキャラっていうのを目指してましたからね。いや、ひょっとするとその頃からなれていたのかもしれませんね。自転車で広島行ったり、愛媛行ったり、徳島行ったりしてましたしね、うん、成績の悪さと合わせて、考えなしという判定が下っていてもなんら不思議ではありませんな」

「そうかもしれませんね」

 

あの夏の地図をせーので窓から投げる