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デザートだけ残し、店を出るためにお会計に。
「3430円になります」
「私、細かいの出しますよ」
「マジで?めっちゃふとっぱらじゃん。どうしたん?」
「小銭がたくさんあってうざいんです。」
「そっか。じゃあ僕は1万円だして、1万430円で」
「はい。1万430円預かりします。7千円のお返しです」
「はいありがと」
「ちょちょちょっと、なにおつりもらおうとしてんすか?430円出して7千円のおつり受けとっとったらびっくりするわ」
「(ちっ!)あ、すみません。間違えてしまいました」
とかやりつつ外へ。
「次ここへ来ることはありませんね」
「えっ?何でですか?おいしくなかったですか?」
「じゃなくって、禁煙だったからです」
「あ、そこが一番大事なとこなのね」
「もう、長い時間すえなかったから手が振るえてきてますよ」
車に乗り込み出発。駐車場で変な場所に停まっている車に罵声を浴びせられているのを横耳で聞きながら駐車場をでる。
「じゃあ次どの店行きますか?」
「もう食べられませんって」
「まあ、冗談なんですが、さて、どうしますかね」
「さあ?」
「カラオケ行きますか?」
「高いからいいです」
「うーん、じゃあ帰りますか」
来る時に通ってきた最短の道ではなく、ちょっと大回りになる、平田の方を通って帰る道にハンドルを切る。
同乗者はタバコを吸われ始める。つられて僕も吸い始めようとタバコをくわえるがライターが見当たらない。
「あれ、ライターが見当たらないなぁ〜」
「どうぞ社長」
「これはこれは」
横からライターで火をつけてもらう。
「タバコはやっぱりやめられませんか?」
「そうですね。やめようとも思いませんしね。藤原さんはどうですか?」
「僕はね、この一箱を吸いきったらやめようやめようと思っているんですが、なかなかやめれなくって」
「ついつい新しい箱を買ってしまうんですね」
「じゃなくって、一箱がなかなかなくならないんです。で、なっかなかやめれなくって」
「…。そのタバコって1ヶ月前からあるやつなわけ?」
「そうですよん」
「味悪くなるって」
「あまりかわりはわからんね。でもメンソールはぬけつつあるかも」
「そういえばメンソールでしたね。ていうか、肺まで吸ってませんね」
「うん。体に悪そうだから」
「…」
「なんてね、吸っちゃうよ」
肺まで吸う。初めて肺という器官を持った肺魚が空気を最初に吸った時はこれくらい違和感があったのではないだろうか。いや、僕は初めて肺まで吸ったわけではないけど。
「メンソールが肺に入って、スーっとするね」
まだねんねするには早い時間だったし、途中、冗談でこんな提案をしてみる。
「今から海行きますか?まだ行っていないんでしょう?」
「そうですね。前回は誰かさんのリサーチ不足、ルートチョイスミスにより海を堪能できませんでしたしね」
「ごめんなさい、って、えっ!?海行くんですか?」
「ええ行きますよ」
びっくりだ。10月よん。夜よん。
「へぇ〜、じゃあどこの海行きますか?」
「海って言ったら河下でしょ」
「えっと、どう行くんでしょうか?」
「そこの道曲がってください」
「ああ、ここね。よく通る道ですわ。ここの近くに康国寺ってとこあるんですよ。外国の雑誌でのランキングで日本庭園のなかで8番目くらいなんですけど、めっさしょぼいんですよ。びっくりしました。そこをみたら足立美術館のよさがわかりましたよ」
「へぇ〜、どうでもいい話ありがとうございました」
「…」
「でね、河下に友達がいるんですけどね。高校の時に真夜中に無免許で家の車飛ばしてよく行ったんですよ」
「まじっすか。専務とかにはばれなかったんですか?」
「まあね。ウチの親の目って節穴なんですよ」
「へぇ〜。専務も社長ももっとしっかりしろぉ」
「ここらへんって夜通る時怖かったんですよ」
「無免許でつかまるかも、ってことでですか?」
「そんなんこわくないんですが、夜になると出るらしいんですよ、おばけが」
「ほうほう。警察よりおばけが怖いわけですか」
「友達に霊感が強い人がいて、「感じる」とか言ってました」
「バイクの免許持ってます?」
「いや、僕は持ってないですけど」
「昔、免許持っていないけど、乗ってみたことがあったんですよ。そしたら振り落とされて、それがトラウマになってもう乗れなくなっちゃいましたよ」
「家にバイクありましたっけ?」
「人のバイクとって走り出したんです」
「尾崎かよ!てか、そんなんばっかだなぁ」
「てへへ」